アゼル： 久しぶりにくつろぐ自らの部屋は随分と狭くなった気がする。
アゼル： だが、それを煩わしいと思うことはない。喜ばしい、とさえ思う。

颯花： 台所でお茶の用意をしている。　久しぶりにケーキなぞ焼いてみたり

アゼル： 香ばしい匂いが鼻を擽る。こういう感覚も久しい。

颯花： 「……これでよし。」

颯花： トレイに珈琲とケーキを乗せて持ってくる

アゼル： 「―――…ん」
颯花： 「どうぞ。」

アゼル： 「ん―――」
アゼル： 「………」

アゼル： 時折、思う。
アゼル： 自分は、彼女を、無意識に傷つけているのではないかと。
アゼル： 気のせいであって欲しいと願う。
アゼル： だが、彼女の横顔が、時折、とても寂しそうに見えるのは、何故だろうか。

アゼル： 「―――…颯花」
颯花： 「……。　　……何？」　少しボーっとしてたらしい。

アゼル： 「―――…」

アゼル： 言おうとして、やめた。
アゼル： 後になってみれば、怯えていたのかもしれない。
アゼル： 彼女に、否定されることを。

アゼル： 「―――…なんでも、ない」
颯花： 「……変なの。」

アゼル： 暖かな珈琲、甘いケーキ。
アゼル： その二つを味わい、思った。
アゼル： 信じていたい。
アゼル： そう、強く、心から―――

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