“買収王”萩竜次

彩色・原画 貘社

プレイヤー:萩竜次   スタイル:エグゼク=エグゼク◎・フェイト

 

「・・・以上が私どもがつかんだ情報です。このことから見ても、あなた方がただのイワサキの子会社などではあり得ないのですよ。」

  私は萩竜次。千早重工渉外部長と言う役を任されている。今、私は久しぶりに千早アーコロジーを出て、とある中小企業の社屋にいた。お供は秘書と、それなりに腕の立つカブトが一人。

「もう私がそのイワサキの子会社社長であるあなたをわざわざ訪ねた理由もおわかりでしょう。・・・話していただけませんか、イワサキがあのプロジェクトを持って意図する所を。」

  目の前にいるのは、今まで内偵を進めてきたトロン(コンピュータ)技術開発会社のエグゼクだ。・・・そして、今ストリートと我が社を騒がせる事件の真実の一端を知る人物でもある。そのエグゼク・・・壮年の男・・・が苦々しげに口を開く。

「・・・なんの話だか、さっぱり分かりませんな。あなた方が入手したという情報が、本物であるという証明は誰がしてくれるのですか?何処から、どうやってその情報を手に入れたのでしょう?」

  必死でまくし立てるエグゼク。私は軽く肩をすくめてやる。

「・・・非合法な手段を使った、と言わざるを得ませんね。」

「ほほぅ。では、そのデータが改竄されていないと証明できる物は?私どもとしても、いきなり訳の分からない濡れ衣を着せられたからと言って、他社に情報を開示するわけにも行かないのです。いや、あなた自身がご自分で「作った証拠」を持ち込んで言いがかりを付けているのではないですか?」

  なるほど、面白いことを言う。しかし、今回は違う。調子に乗って更にまくし立てようとするエグゼクを遮って、秘書を呼ぶ。アタッシュケースから出した書類を受け取り

「あまりこういう言い方はしたくないのですが、これ以上の情報の隠匿は資本主への重大な背信行為と見なさざるを得なくなります。」

「何だと?!」

  書類をテーブルの上に広げる。

「上場されている株式の75%を千早グループが取得しました。つまり、たった今、現時刻を持って、あなた方の社は千早グループの管理下に置かれる事になります。これが株式取引の詳細データです。・・・ご確認を。」

  エグゼクの表情が凍り付く。

「ば、馬鹿な、そんなことがあるはずがない!い、イワサキは何をしているんだ?」

「用済み・・・と言う事ではないですか?・・・残り粕を掴まされた、何て事はごめんですので、せいぜい役に立っていただきたい物ですが・・・。」

「う、うるさい!」

  カチ

  逆上したエグゼクが椅子の傍らにあったスイッチを押す。隣室への扉が開き、待機していたのであろう彼の私兵達が雪崩れ込んでくる。手にはそれぞれ機関銃が握られており、銃口が私の方を向く。
  突然の事態に怯える私の秘書(彼女には今度休暇をやろう・・・)、さして驚いた風もないのはカブト・・・すぐに私を庇える位置には居るが、盾すら構えていない。この場のことは全てあんたに任せる、そう言わんばかりの態度だ。

「本社から切り捨てられただと?馬鹿を言うな。貴様の首と、後は多少の手土産も有れば、席の一つくらいは手にいれて見せるわ!」

  完全に負け役者のセリフだ・・・。思わず吹き出しそうになるがこらえる。銃口を前にして、我ながら不謹慎ではあるが。

「無駄です。あなたは既に負けているのだから。」

「未だ言うか!この状況、王手を掛けたのはどっちだと思っている?!」

「それでは」

  パキッ   指を鳴らす。

「何故この銃口はあなたの方を向いているのでしょうか?」

  合図と共に今まで私に突き付けられていた銃口が一斉にエグゼクの方を向く。

   チェックメイト
「王手詰み、です。」

「う・・・ぐぁ・・・。」

  崩れ落ちるエグゼク。しかし、同情してやる暇も義理もない。

「さあ、話して貰いましょうか、あなた方が開発した“DOM”と言うゲーム機・・・トロンでイワサキが何を企んでいるかを。」


ふおぁあ、ようやく終わった・・・。長いことお待たせしました、

“買収王”萩竜次さんのショートストーリーです。

難産だった・・・。サボってたんじゃないよ(自爆)

今回はエグゼク編。・・・どさくさに紛れて《真実》撃ってそうですけど。

二発の《M&A》は実際のセッションでは結構使いにくかったようですが・・・。

ちなみに、萩さんがこの様な状況で敵ゲストが召還したトループに対して使ったのは実話です。

後・・・やっぱり読み返すと、萩さんってこんなキャラだっけ?などと思ったり。(核自爆)

いかがなもんでしょう、萩さん。

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