“ダイナマイトドラゴン”リー=ウーチェン
原画・彩色:貘社
プレーヤー:貘社 スタイル:イヌ◎・チャクラ●・カブキ
文章:貘社
グシャァ!
ドラゴン・リーことリー=ウーチェンは通信機を握りつぶした。
「・・・良いんですかねぇ。命令無視ですよ。」
それを彼の後輩が不安そうに見守る。
「良いんだよ。・・・・通りかかった車に通信機壊されて命令が聞けなかったんだから・・・・・・・。」
「・・・・・・んなムチャな・・・・・・。」
平気な顔のリー、彼はそのまま通信機をゴミ箱に放り投げる。
「いいか!クグツの殺害事件!所属不明ヘリ墜落事件!この一連の事件にはきっとなにかある!あるに違いない!なきゃいかん!」
「それって単なる、状況証拠と先輩の趣味じゃないですか!」
「いや、・・・・・刑事のカンだ。」
断じて違う、後輩は思ったが、缶ジュースを握り潰して言う彼に抗う気にはなれなかった。
「新米のお前に古き良きブラックハウンドの伝統を教えてやろう。」
「・・・・なんですか?」
「疑わしきはブン殴れ。」
「・・・・・・・・・オメガシステム持ち歩かないのも伝統なんですか?」
「・・・・・・どーせ使わないんだから良いだろうが・・・・・・・。」
最近のブラックハウンドも居心地が悪くなった。嘆かわしい事だ。堅物の後輩にリーは頭を振った。
「課長についちゃ気にするな、手柄を立てりゃあの鉄面女もなんも言わん。じきに美女なんかが助けを求めてくるさ。」
「・・・・・・そんな映画みたいに都合の良い事が・・・・・・・。」
そこまで言ったところで後輩は息をのんだ。向こうのアーコロジーから少女が一人転がり出て来る。そして追いかけてくる黒服の男・・・・・・・・。
「助けて下さい!追われてるんですぅ〜!」
そして、期待通りの展開・・・・・・・。
「・・・・・起こりましたね。」
あまりに都合のいい展開に言葉もない後輩。しかしリーは目を輝かせて黒服の男たちの前に立ちはだかった。
「まかしとけ!」
そういうとリーは特注の人民服を脱ぎ捨て、ヌンチャクを構えた。空に舞う上着の裏に縫い付けたゴールデンピンチェルがきらりと輝く。
「フリーズ!ブラックハウンドだ!これ以上このお嬢さんに構うならこのドラゴン・リーが相手だぜ!」
普通なら銃を構えるところを、リーはクンフーの構えで挑んだ。間抜けな姿だがそれに黒服の男たちは見覚えがあった。
「ドラゴン・リー・・・・・ブラックハウンドの“ダイナマイト・ドラゴン”か!」
男たちはニ、三歩たじろぎ、ざわついた。
「有名なんですね。先輩。」
「まあな。」
尊敬のまなざしの後輩。得意げなリー。
「・・・・・あの、マシンガンにもクンフーで挑むと言う・・・・・・。」
「・・・・・・・クンフーかぶれの大バカ刑事・・・・・・。」
当然、ひそひそと男たちが話していることなど二人は知る由もない。
「さあ!来るのか?それとも帰って社長にでも泣きつくか?」
リーの言葉に男たちは弾かれる様に応じた。それぞれサイやヌンチャクを取り出しリーを囲み出す。
・・・・・・リーの下で働くようになってからこういう類の犯罪者によくあうきがするのはきのせいだろうか?後輩はふとそう思ったが深く考えないことにした。
「いやぁ!」
サイをもった黒服の男が飛びかかった。一撃、ニ撃、鋭い攻撃。しかしリーはそれを軽々とかわす。男が三撃目を繰り出そうとした瞬間、リーのヌンチャクが唸りをあげた。顔を右!左!続いて回し蹴り!男は吹き飛ばされて近くのショーウィンドウに突っ込んだ。
ぶんっ。
リーが身を屈めると頭上をヌンチャクが掠める。すかさずリーの足払いが唸った。
転倒した男を踏みつけ、左右から襲いかかる男に裏拳!ヌンチャク!そして!
「ほぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
リーはジャンプすると両足で左右の男を同時に蹴り上げた。二人の男はゆっくりと後ろにのめり倒れる。
「このぉ!」
逆上した男が背後からどこから持ち出してきたのかビール瓶を振り下ろした。
ぱぁん!
乾いた音をたてビール瓶がきれいに砕け散る。
だがリーは怯まない。苦痛に顔をゆがめて首をニ、三度振るとそのままの姿勢から回し蹴り!男は吹き飛び、屋台を粉砕する。
残るは一人、リーダー格のなぜかチャイナ系の男・・・・・・。
彼はリーに対し悠然と立ちはだかると指を鳴らした、そして構え、こちらに手招きすする。
半瞬とおかずリーはそれに答えた。踏み出してのハイキック!正拳!裏拳!回しげり!
しかし男は次々にそれを受け止め、逆にリーの鳩尾にコブシを入れる。続いて膝蹴りを鳩尾に一撃!ニ撃!崩れるリー、その顔を男は勢いよく蹴り上げた。
「先輩!」
後輩の悲鳴が聞こえたか、リーは踏み止まる・・・・・が、勢いは止まらずそのまま後ろ向きに車道に踊り出る。そして、そこに運悪く猛スピードで車が飛びこんできた。
ヒステリックなブレーキ音そして・・・・・・・・
どん!
鈍い音が響いた。車にぶつかったリーは衝撃でボンネットに跳ね上げられ、つづいて追突した車の衝撃で天井にまで跳ね上げられる。そして、追突した車からガソリンが染み出してきたことが次なる惨劇を招いた・・・・・・。
ごぉん!(アングル、車正面から)
ごぉん!(アングル、車後ろから)
ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!(アングル、歩道から)
「せんぱぁぁぁぁぁぁい!」
あの衝撃、爆発・・・・・・・到底助かりっこない。後輩はいまどき化石燃料で動いている車が存在している事を気にも止めずに叫んだ。・・・・・・だが、彼も自分の心配をせねばならないことを思い出した。
彼の前にチャイナ系の男がたちはだかる。彼は不適な笑みを浮かべると指を鳴らす。
「!!」
次の瞬間、男は自らの身に起きたことが理解できなかった。誰かの腕が自分の首を締め付けている。
「・・・まってくれ、そいつはおれの可愛い後輩なんだ。」
それは紛れもないドラゴン・リーの声だった。男はそれに驚愕の声をあげる.
「バカな!あの爆発で生きているなどと・・・・・。」
「・・・・・・・・お前たちとは鍛え方が違うんだよ!」
ごきぃ!
鈍い音とともに男から力が抜けていった。、リーが手を離すと男はその場に人形のように崩れ落ちる。
「・・・ふう。」
どこか悲しそうな顔でリーは呼吸を整えた。正義のためとはいえ、戦いはいつも空しい。しかし、これが彼らブラックハウンドの任務なのだ、悪の尽きるまで我々ブラックハウンドは戦わなくてはならない・・・・・・・。
「・・・・・すごいです!先輩!・・・ぼく、見なおしちゃいました!」
興奮して駆け寄る後輩、リーはしばし無言で脱ぎ捨てた人民服を拾い上げる。
「・・・・ま、ブラックハンドなんかに居ればこんなこと日常茶飯事だ、お前もブラックハウンド隊員に必要な知識と技術って奴を身につけなけりゃな。」
「はい!いろいろ教えて下さい。」
立ち去ろうとするリーに目を輝かせながら追いかける後輩。そして・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・リーは立ち止まった。なにか忘れている様な気がする。そう言えば・・・・・・。
「・・・・そういえば、あの女の子は?」
「・・・・・・・あ。」
二人は顔を見合わせ、慌ててあたりを見まわした。よく考えると、さっきの女の子の姿は跡形もない。そして、二人の視線は大破した屋台、ショーウインドゥ、車道で黒煙を上げる車に向けられた。
「・・・・・・これ・・・・・・どうします?」
呆然とつぶやく後輩に無言のリー。しかし、やがて彼は不適な笑みを浮かべた。
「・・・・・なぁ、新米。ブラックハウンドに必要な知識と技術その1・・・・・・・。」
「・・・・・はぁ?」
「『始末書の書き方』だ、ゆっくり叩きこんでやるからな!・・・・・・ついてこい!」
「せんぱぁぁぁぁぁぁぃ!」
後輩の絶叫が響く中、警備会社のサイレンの音が遠く、こだましていた。
うーん、要求通りの、チャクラでカブキな殺陣シーン・・・。(笑)
紗沙羅さんの登場、一行だけかい。いいけど。ハデだったから。
しっかし、この惨状を片付けさせられる奴って災難だと思うぞ。(苦笑)
誰にやらせるかは・・・きーめたっ!(ニヤソ)