“ダスト”開発No.VT−5517
原画・彩色 揚 紅龍@管理人
プレイヤー:我流西 スタイル:レッガー◎・ヒルコ●・チャクラ
登場作品: EmperialGuard Lovers&theBeast
「お姉ちゃん、未だ帰ってこないね。」
「・・・大丈夫だよ、あの人、殺したって死なないから。」
馬鹿でかいトロンの前で、ローティーンの子供が二人、不安そうに話をしている。何処から見ても仲の良い姉弟にしか見えないが、良く聞くと違うらしい・・・。おれは今、この二人の家でボディーガードのまねごとみたいなのを任されている。とてもそうは見えないが、これでもこいつらは両方とも一流の仕事屋らしい。情報を集めるほうの、って事だ。
さっきから窓の外を警戒しているおれの耳に頼りなげな声が響く。
「厄介な事件に巻き込まれたので、手伝って欲しい。」
そう打診があったのが昨日。ストリートをぶらついていた所で頼まれた。報酬も悪くなかったので承知して、すぐに仕事を始めたんだが・・・胡散臭いのがそこら中に張っていやがる。・・・上手く隠れてるようだがな。
何でもこの子供達、本来はホワイトエリアに住んでいるらしいが、親に迷惑が掛からないように、とわざわざこっちに避難してきたんだそうな。ご苦労なことだが・・・事態を悪化させただけだと思うぞ。
「ちっ、また増えたか。」
あまり安売りはしたくないが、身体のあちこちを強化出来るおれにはちょっと隠れた位じゃ簡単に分かる。目、鼻、耳・・・その他諸々の器官が敵の存在をはっきりと捕らえている。
「鬱陶しいな・・・一度掃除しちまうか?」
今、おれが居る場所・・・つまり、このニューロ姉弟が隠れている場所だ・・・はレッドエリア、タタラ街の外れだ。護衛対象はそのニューロ二人と、その近くのカウチで眠りこけている、更にちっこい女の子供が一人。・・・こっちもこの二人の妹みたいな事を言ってたが、何処の世界に片方だけ角が生えて真っ白い毛皮を持った姉妹が居るんだ。・・・ともかくこの3人を守りきるのがおれの仕事だ。
「全く、お前ら何をやったんだ?」
スポンサーとはいえ、思わず愚痴る。
ぼちぼち面倒な数になってきたなと思ったところだ・・・。だが、銃火器の臭いはしない。今の内なら何とかなるな。
「すいません・・・イワサキにちょっと。」
姉のほうがホントにすまなそうな顔で、とんでも無いことを言い放つ。
「ちょっと待て。」
思わず突っ込む。
「・・・何てこった。さっきから気配はするのに、臭いが中途半端にしかしないと思ったら・・・連中、イワサキの特殊部隊か!」
「・・・なんですか、それ?」
このチビ達には見えない位置に隠れているのだからしょうがないだろうが、連中が居る方角を指さしながら教えてやる。
「おれの予想が外れてなかったら・・・あいつら全員、全身義体の集団だ。」
「え。」
「連中、本気でお前らのこと、狩るつもりらしいぜ。」
ようやく事態を把握したらしい。
「・・・・・・勝てますか?」
不安げに聞いてくる。
「さて、どうかな?ある意味おれも似たようなもんだしな。」
辺りは不気味なほど静まり返っている。・・・さっきまでストリートの浮浪者共が彷徨いていたのだが・・・こう言う時の勘は鋭い人種らしい。人っ子一人居やしねぇ。この場にいるのは、ガキンチョ3人を除けば・・・ここに居る化け物一人と、人間を止めた鉄クズが15人ばかりだ。
「来るぜ。そっちの白い嬢ちゃんを起こしな。奥に隠れてるんだ。」
姉のほうがこくこくと頷くと、自分の妹を起こしに掛かる。弟はトロンをいじくっている。大事な物だけでも確保して置くつもりだろう。
おれは扉の後ろで控える。わざわざジネティックインプラント(変異器官)に頼らなくても、刺すような殺気が近付いて来るのが分かる。10m、5m、3mそして。
「うらぁ!!!」
ガァン!!!
雑魚兵士共が扉を蹴破る前に、逆に蹴り返す。上手い具合に扉がブチ当たり、何人かが無様に吹っ飛ぶ。
「さて、はじめるか。」
敵陣のただ中に飛び込み、格闘戦を仕掛ける。こちらの武器は拳とブーツ。相手もすぐさま体制を整える。手に手にカタナやナイフを持って襲いかかってくる。
ひゅん! ひゅん!
「ふっ!」
ナイフが身体をかすめ、幾筋もの切り傷が生まれる。
「効かねぇんだよっ!」
身をよじり、体をかわして致命傷を避ける。好きを見てこちらも蹴りと拳を見舞う。
「うらぁ!」
がすっ!
鈍い音と共におれの拳が兵士の側頭部に決まる。
「ここばっかりは、取り替えが出来ないんだろ?」
また一人、数を減らし機械人形共に動揺が走る。このまま畳みかける、そう思った瞬間だった、
ざん!!!
「がぁっ!」
おれの右腕が宙に舞う。背後からの一撃。ひゅん、と音を立てて戻っていくのはオメガレッド。・・・こいつ、機械人形共の親玉か。
「・・・制圧しろ。」
ドス、ドスドスドスドス!!!!
おれの腹に・・・いや、全身に機械人形共の凶器が突き刺さる。ナイフ、カタナ、・・・誰だよ、斧なんざ使ったのは・・・おれの身体に穴が開くじゃねぇか。
「・・・・・・痛ぇよ。」
兵士共がぎょっとしたような顔を見せる。驚く暇があったら、手を動かしな。
がすっ!どか!
「こんな具合によ。」
更に数人を昏倒させる。
ひゅん・ざく!
「ぐあ!」
「いい気になるなよ。貴様なぞ、いつでも殺せる。」
硬質化し、高速振動剣モードになったオメガレッドが、おれの心臓を刺し貫く。
「こんな風にな。」
「が・・・あ・・・。」
あぐ・・・ち・・・ちくしょ・・・ぅ・・・・。
・・・・・・
「やっと死んだか。」
ゴミを見るような目つきでイワサキのフルボーグ部隊指揮官が言う。
「片付けておけ。・・・お前達は周囲の警戒をしてろ。私は肝心のガキ共を始末する。」
そして、建物の中に入る。狭い部屋の中には、タップとと思われる、おおきなトロンが二台。中身に興味はないとでも言いたげに一瞥しただけで、奥の部屋に向かう。
ばん!
扉を開けた先には、子供が3人。命令書にあったターゲットのニューロ二人と、それから白い毛布のような物にくるまった子供。互いに寄り添い、ふるえながらも精一杯反抗の目でにらみ返してくる。
男はそれに何の感慨も抱かずに、ただ鞭を・・・
「ぐああぁぁぁ!!!!」
「ぎゃあぁぁっ!」
鞭を振り上げた瞬間、突然外から悲鳴が響く。
「何事だ?!」
「ひぃぃい!」
部下達の声だ。
「新手か?」
慌てて外の様子を見に戻ると、そこには・・・異形の化け物が居た。シルエットこそ人型だが、既に身体のほとんどが人間のそれとは別の物と化している。特に、異様に肥大化した右腕・・・片手で、100kgを越える機械化兵士を吊し上げている・・・。しかし、部下とそれ自身の血で朱に染まった異形こそ、確かにさっき男が殺したボディーガードだった。
既に部隊の兵士はほぼ全滅し、幾人かがやっと息をしている状態だ。
「た、たすけて・・・。」
自分の部下が哀れっぽい声を出しながら這って来ようとする。 グシャリ、そいつの頭を踏みつぶしながら、異形の男は、機械化部隊長に気が付いたように振り向く。新たな獲物を見つけた獣の目が、男を射抜いた。
「ば・・・バケモノ・・・。」
ブンッ!
轟音と共に巨大な物体が真正面から男に飛んでくる。思わず払いのけてから、それがかつて自分の部下であった物であることに気付く。
ガシッ!
突然、視界が真っ黒に覆われる。手だ。巨大な手が自分の頭を鷲掴みにしている。払いのけた一瞬で、バケモノが間合いを詰めてきたらしい。
みし、みし、みし
金属製の頭蓋骨が嫌な音を立て始める。
「ぐ・あ・あ・あ・・・。」
「死ね。」
バカン!
そのまま力任せに建物の壁材に叩き付ける。機械人形は、首から上が無くなった。
・・・・・・
・・・・・・ようやく意識がはっきりしてきた。未だ、ちっとばかりふらふらするが・・・。ガキ共は大丈夫か・・・?と、視界の隅に、当のガキ共が居ることに気が付いた。
「ちっ、見たか・・・。」
まだ身体を元に戻してない。返り血・・・血に見えるがほとんどオイル・・・も自前の血もたっぷりだ。案の定、ガキ共もおれを見て、後ずさりを・・・。
たたたた
一番ちっこい、あの白いガキが近寄ってくる。なんだ?
「おい、怖くないのか?」
ぐすぐすと鼻をすすりながら頷く。・・・しきりにおれの傷をのぞき込んでくる。
「・・・いたい?ねぇ、いたい?」
心配・・・してくれてるのか?
「大丈夫だ。おれはそう簡単には死なないようにできているんだ。」
「ぐす。ホント?」
終いにゃ、自分の怪我でもないのにびーびー泣き始める始末だ。しきりにおれにすり寄ってくる。痛いの飛んでけーを繰り返すこいつに途方に暮れるおれ。流石に姉と弟のほうもこっちにやってくる。
「お医者さん、呼びましょうか?」
「いや、良い。それよりこの子なんとかしてくれ。血で汚れる。」
3人ともこっちの言う事なんざ聞いちゃいない。やれ、包帯を巻くだの、消毒は何処だのと始める。
(やれやれ、まずい仕事選んじまったな。情が移っちまうじゃねえか・・・)
あい、ようやく書き上がりました。ダスト君ショートストーリーっす。
やっぱり熱くなってしまう・・・。やっぱりこういうノリって好きやわ〜。
我流西君、ネタ出しに付き合ってくれてサンクス。結局こうなったよん。
と言うか、長くなったなぁ。多分、最長記録更新です。ま、いいか。(笑)