<<難攻不落>>っ!!! 20000HIT記念SS
【父と娘の社会戦】
1.
中華街にある高級マンションの一室。重い沈黙に支配されたそこで、父娘は静かに対峙していた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
歴戦のカブトである揚
紅龍の静かな・・・しかし力のこもった視線を受けながらも、"龍娘"緋山有希は平然と立っている。
「有希。」
「嫌。(きっぱり)」
養父の言葉を最後まで聞かず、彼女は拒否の声を上げる。
「・・・まだ何も言っていないが?」
「アルバイトをやめろって言うんでしょ?そんなの聞かなくても分かるよ、紅龍。」
「分かっているのなら・・・。」
「絶対に嫌!!」
自分の言葉に真っ向から拒否する娘に、揚はため息をついた。
「なら・・・今月の小遣いは無しだ。」
「!!」
彼の宣言を受け、有希は肩を震わせながら下を向く。
この年頃の女の子ならば、小遣い無し宣言はかなりのダメージだ。
頃合いと見た揚は譲歩を持ち掛けようとした。
「ただし・・・。」
「ほ・・・。紅龍のばかあああああっっっっ!!!!」
ダダダダダッッッッ
揚が声を掛ける間もなく、有希は走り去った。
「・・・有希を相手にするには、サウンドダンパーが必要なのか?」
後には耳を押さえて呟く揚が一人残されていた。
2.
10分後、揚はお茶を入れてくつろごうと努力していた。
「・・・ふう。」
いくら名の売れたカブトでも彼はまだ27歳。17の娘を持つには若すぎる年だ。
ストリートキッズ出身で家族を知らない彼に、"父親"と言う役はやはり重過ぎるのかもしれない。
ブルブルブル
K-TAIの振動を感じ、着信を確かめる。
ディスプレイにはルクセイド・タカナシと表示されていた。
「何の用だ。」
「おーっすヤンくん。いきなりご挨拶だなあ。」
開口一番、K-TAIの向こうで能天気な声を上げるタカナシに揚は再び問い掛けた。
「何の用だと聞いている。」
「いやな、ちょーっと面白い噂を小耳にはさんでな。・・・その様子じゃ、関係無くも無いみたいだなあ。」
「話の趣旨が見えないのだが。」
「ウェブを覗いてみろよ、なかなか笑えるから。紅の龍で検索かければすぐ見つかるぜ。じゃあなー。」
「ウェブ?」
回線が切れた後、ポケットロンを立ちあげてキーワード検索をかけてみる。
検索結果を見た揚は奥歯を噛み締めた。
「有希・・・っっっ。」
ギリッ!!
部屋に、歯軋りの音が響いた。
3.
10分後、揚は震える手でお茶を入れ直しくつろごうとしていたが、完膚なきまでに失敗していた。
ぴしっ
両手で包むように持った茶碗が嫌な音を立てる。
pipipi pipipi
テーブルに投げ出されていたポケットロンが着信を告げた。
「・・・君か。」
「どうしたの揚さん、恐い顔・・・。」
ディスプレイに映し出された顔は、彼が護ると誓った女性、道峰桜子だった。
「いや、なんでもない。どうかしたのか?」
「ええ。あの・・・、そう、ウェブを見てちょっと気になったから。」
ミラーシェードの奥で揚の顔が引きつった。
「私はなんとなく嬉しかったんだけど・・・。"あれ"って有希さんがやったんじゃないかなって思って・・・。」
「・・・桜子、君が何を言いたいのかよく分からないのだが。」
「・・・揚さん、誤魔化さないで。有希さんと何かあったんじゃないの?もうしそうなら、私に話して欲しい・・・。だって・・・。」
「・・・。」
自分に真っ直ぐな視線を向ける桜子に、彼は無言で先を促した。
「だって・・・、その内私達家族になるんだから・・・っ!!」
最後まで目を逸らさず、桜子は言い切った。・・・顔は首すじまで赤く染まっていたが。
「・・・。」
「揚さん?どうかしたの?」
どうやらこの精神爆弾は、不動の心を持っていない彼にはいささか強烈すぎたらしい。
しばらくこの場には呆然とポケットロンを眺めるだけの男と、その画面から心配した表情で必死に呼びかける女性という心暖まる光景が展開された。
4.
「ちょーっとやりすぎたかなあ。」
家を飛び出した有希は、イエローエリアにある自分の事務所兼隠れ家に来ていた。
どうやらここでしばらくほとぼりを冷ますつもりのようだ。
「お小遣いくれないくらいで大人気なかった気もするけど、まあやっちゃった物はしょうがないよね♪」
「・・・そうだな。やってしまった物はしょうがないな。」
ピシッ
背後から聞こえた低い声に有希は彫像のように固まった。
ギギギ・・・と錆付いた様な音を立てながら振り向く。
そこには彼女の予想通り、養父である揚紅龍が立っていた。
「な、なんでここが!!!?」
「・・・。」
思いっきり動揺する娘に、揚は黙って左手に持っていたレコーダーを再生した。
『でねでねさくらちゃんっ、しばらく隠れ家にいるから暇だったら遊びに来て。アドレスは・・・』
プツッ
揚はレコーダーを止めると、静かに有希を見つめている。
「と、盗聴・・・。あはは・・・。」
「桜子に話したのもお前だな、有希。」
「なんでそんな事までっ!?」
答えを聞いて揚はむーんっとオーラを放ちながら話を続けた。
「連絡してきた桜子の様子がおかしかったからカマをかけてみたんだが・・・。当たりだったか。」
「え"え"っ!!ず、ずるいよ紅龍!!」
揚は娘の叫びをあっさり黙殺した。
「さて、有希・・・。たまには父娘水入らずでゆっくり話そうか・・・。」
「ひぇぇぇぇぇぇっっっっ!!」
隠れ家に有希の悲鳴が響き渡った。
後日談
翌日学校で有希が親友の神崎さくらに涙ながら話した所によると、結局1年間お小遣い無しで許してもらえたらしい。
もちろんそこに至るまで1晩中説教をされたらしいが。
その話を聞いてさくらは呆れたように言ったという。
「・・・そこまで好き勝手やってそれで済んだんなら良かったじゃない。」
全く持ってそのとおり。
【父と娘の社会戦】 終
あとがき
どうも、いつもお世話になってます。kigyouです。
今回は20000HIT記念ということで、拙いSSですが一本書かせて頂きました。
よろしければお納めください。
ちなみのこのSSは、オンラインN◎VAの時に揚さんが発言されていた"父娘喧嘩の風景"からプロットを起こしています。
と言う訳で原案は揚さんと言う事でよろしく(笑)。
"あれ"が何かは皆様の御想像にお任せします。
それでは。揚さん、これからも<<難攻不落>>っ!!!頑張ってください。
Draft proposal 揚 紅龍
Plot&Write kigyou
Writing end 2001/11/30
げはぁ。(爆笑)
セッション前の戯言に、見事なデティールを与えて下さって有り難うございました。
"父娘喧嘩の風景"なるネタ・・・実際はこんな感じでした。
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揚:最近、有希が厄介事を増やしてってる様な気がする。そのたんびに親子喧嘩してるのか・・・。(w
カース:なぜに?
秋月:結局、ツケがドラスケにくるからだろうなぁw<怒鳴り込み
匠屋:(w
kigyou:仲いいっすね(笑)。
カース:相馬も(怒鳴り込みに)行ったからな
匠屋:ケンカすらしなくなったらおしまいだな。親子関係も夫婦関係も(w
揚:社会戦さえも飛びますからね。(w<親子喧嘩
秋月:・・・大変だなぁ
ドラ助:「小遣い無し!」<社会戦ダメージ6 1シーン売買使用不可
カース:自分で稼いできそうだね
有希:「ちょっと聞いてよ、紅龍ってさぁ・・・。」ぐちぶち <社会戦ダメージ5 身に覚えのない噂
匠屋:ヤツが元凶かw
ドラ助:「有希が何か聞いてきても答えないで頂きたい」<社会戦ダメージ7 〈社会:三合会〉使用不可
匠屋:親子でツブし合うなぁ(w
カース:壮絶な親子喧嘩。止める人間がいるよねぇ
kigyou:本当に仲いいなあ(笑)。
カース:欲しいよねぇ
有希:「桜子さ〜ん、紅龍が虐めるよ〜ぅ(泣)」(この後、桜子から〈お仕置き〉が飛ぶ)
<社会戦ダメージ9 精神ダメージ山札引き(核自爆)
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ってアホな事を言っていたのですが・・・見事な作品にしていただいて有り難うございました!